トップページ取組み・活動THE DRUGSTORE STORY 「ドラッグストアで生まれた幸せの物語」#01

#01:喋れなくても

 「ある日のこと、お母さんに連れられてやってきた男の子は可愛い人形を持ったまま、私のことをずっと見ていました。その時は品出しの途中だったので、
「こんにちは、いらっしゃい」
と声をかけただけだったのですが、男の子とお母さんは店内を1周してまた私の所にやって来ました。
私は品出しを途中で切り上げ、その子に、
「人形可愛いね。何て言う名前なの?」
と話しかけましたが返事は無く、男の子はただ笑顔で頷いていました。

 それからは頻繁にお店に来てくれるようになり、返事を待たない私とその子の会話は何度も続きました。
ある日、その子のお母さんが私の所にやって来て、
「いつもうちの子の相手をしてくれてありがとうございます。病気で上手く喋れなくて、同じ歳ぐらいの友達があんまりいないのでお店に来るのが楽しみで、毎日『行こう行こう』って言うんです」
など色々なことを話してくださり、私はこのお店で働けて良かったと心から思いました。
そして、半年以上が過ぎたある日のこと、男の子とお母さんがいつもの笑顔と違い、少し悲しそうな顔をして来店されました。
私の所にやってきておっしゃるには、お父さんの都合で遠くの町に引っ越しをしなければいけないとのこと。
どうしても最後に伝えたいことがあって来てくれたのです。

 いつも笑顔のその子は、今にも泣き出しそうな顔で私に手紙を渡してお母さんの後ろに隠れてしまい、
「今読んで良い?」
と聞くと首を振ってダメダメと言いました。
「また遊ぼうね」
と最後のお別れをして、二人は見えなくなるまで手を振って帰って行きました。

  その日の夜に手紙を開け読んでみると一生懸命書いた平仮名で、
「ずっとともだちだよ」
とありました。

  喋れなくたって気持ちは通じる。
もう会えないかもしれないけれど、2人は「ずっと友達だよ」
そして私は今日も、その言葉を胸に仕事に出掛けます。

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