トップページ取組み・活動THE DRUGSTORE STORY 「ドラッグストアで生まれた幸せの物語」#02

#02:夏の朝

 「店長おはよう」
いつものお爺さんが笑顔でお店に入ってくる。
「今日もお水一ケースですね? お運びします」
週2回、朝一番の変わらないやり取りで車に向かう。トランクを開けるといっぱいの野菜が目に入る。
「今日のナスは大きいねぇ!」
うれしそうに、
「そうなんだよ!」と笑う。

  そんなお爺さんがここ2週間お店に来ない。
風邪でも引いたカナ? そんな事をふいに思った時、お店の電話が鳴りました。
「お水を運んでいただけませんか?」初めて聞く年配女性の声。
「生憎当店は宅配をやってないんですよ。すみません」残念そうに「そうですか」と電話は切れました。
次の日、「店長さんはいらっしゃいますか?」、昨日の女性からでした。
「実は……」と、女性。あのお爺さんの奥様でした。
お爺さんは畑で倒れてそのまま帰らぬ人に。
生前、「買い物に困ったらあの店長さんに相談してごらん」、そんな話をしていたそうで、ダメもとで連絡をくれたそうです。まさか! 元気そうだったのに……。
「お水はお運びします。他には何かありませんか?」
少々の雑貨と水1ケースを持ってご自宅へ伺いました。
「こんにちは、お待たせしました」
足を引きずりながらお婆さんが出てきました。
「あなたが店長さん? いつもお世話になっていました」
少し悲しそうに笑いながら、
「お爺さんは店長さんがいつもトランクの中の野菜をホメてくれるのがうれしくて、お店に行くのをとても楽しみにしていたんですよ」
いつもと同じように畑に向かい「帰りはまた水買いに店長のトコ寄ってくるよ」、そう言って出たまま帰らぬ人となってしまったそうです。
「今日もおいしそうな野菜がいっぱい採れたね」
「そうなんだよ」
そんな少しのやり取りで「今日の野菜もホメられたよ」とうれしそうに帰宅するお爺さんを見るのが、お婆さんは大好きだったそうです。

 半年後、お婆さんからの注文電話はなくなりました。お子さんの所へ引っ越したそうです。
夏の日差しが強い朝は、あのお爺さんの笑顔を思い出します。
この仕事は物を売るだけの仕事じゃない、それを教えてくれたあの人を。

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