トップページ取り組み・活動THE DRUGSTORE STORYⅡ 「ドラッグストアで生まれた幸せの物語」

お化粧の写真

  ある日、私が商品の発注をしていると大変ご年配のお客様が何かをお探しになっている様子でした。

 「いらっしゃいませ、こんにちは。何かお探しですか?」とお聞きすると、恥ずかしそうににっこり笑顔で「こんな年して化粧なんてはずかしいねぇ…。化粧なんてしたことないから何がいいのかちっとも分からないよ」とご謙遜されました。

 基礎化粧やメイク商品のサンプルを手にお付けしたり、明るめのお色味をご紹介した後に「お疲れになったでしょう?」とお聞きすると、照れくさそうに「本当にありがとね」とおっしゃってくださいました。

 それからは毎日お店に来られるようになり、一言二言と短かった会話が、ご家族の事もお話し下さるようになりました。お孫さんが私と同い年なこと、トラックの仕事で腰を痛めて辛そうなこと。お孫さんの事を話す時は決まってとても可愛らしい、嬉しそうなお顔でした。

 そんなお客様が、いつしかパタリとお店に来られなくなりました。どうしたのかな?風邪をひいたのかな?心配でした。

 そしてあの日。

 あの日、女性のお客様にKさんですか?と聞かれました。「先月、うちの母が亡くなりました。生前に大変お世話になったと聞いておりましたのでご挨拶に伺いました」と伝えられました。

 お孫さんの赤ちゃんのお宮参りの家族写真を撮る時に大変困っていたが、こちらでお化粧品を教えてもらった事が大変嬉しかったこと。お化粧が出来るようになって性格がうんと明るくなったこと。ひきこもってテレビばかりのおばあちゃんがお化粧して出かけるようになったこと。もともと心臓が悪かったけれど最後は幸せに寿命を全うできたと思う、などたくさんお聞きしました。

 「お母さん、自信がついたんでしょうか。毎日でかけるのが楽しくて堪らない感じでした。本当に感謝しています。毎日話の中にKさんがでてきてたんですよ」

 「母の遺言…というほどのものでもないんですけど、ずっとこれを見せたいと言っていたものですから」と一枚の写真を見せていただきました。

 おばあちゃんが私に見せたかった写真。そこに写っていたのは、写真館で撮ったお孫さん夫妻とそのお子さん、そして綺麗にお化粧した、嬉しそうなおばあちゃんでした。

PAGE TOP