トップページ取組み・活動THE DRUGSTORE STORY 「ドラッグストアで生まれた幸せの物語」#06

#06:心の耳

 「“ありがとう”って今、口先だけで言ったやろ!
人間にはな、心にも目や耳があるんやで。
心の耳はホンマもんの“ありがとう”しか聞こえへんねんで、すごいやろ~。
今のあんたの“ありがとう”は、おかあちゃんの心の耳に聞こえへんかったわ。
世の中、鍋の蓋にも“ありがとう”なんやで」

  意地悪く言う母。
口を尖らす私。
幼い私と母の毎日。

 接客の仕事も20年程経つ、14回目の母の命日。
おかあちゃん聞いといてな、今日の私の“ありがとう”。

 閉店も間近、30代前後の男女がご来店。
女性は慌ててお薬を探しに、男性は女性を待つ様子で腕組みをし店内をゆっくり歩かれています。
化粧品のところに来られたので、
「奥様へのプレゼントにいかがでしょうか」と声をおかけ致しました。男性は照れくさそうに、
「えッ!奥さんに見える? ホンマに? 違うねん彼女やねん」
私は、「申し訳ございません、別々に店内をご覧いただいておりましたので、信頼されているご夫婦かと思いましたもので」とお詫び致しました。

  お会計を済まされた女性がこちらに来られたので、商品のご説明とご紹介をさせていただいたところ、ファンデーションをご購入くださいました。もちろん男性からのプレゼントです。
この微笑ましいお2人が幸せになりますようにという想いを込め、“ありがとうございます”とお見送り致しました。その日、最後の私の“ありがとう”です。

 1ヵ月を少し過ぎた頃でしょうか。
あのお2人が再度ご来店くださいました。なんと彼女の三歳のお子様を連れて3人で……。お二人はお店のご近所にお住まいではないこと、あの日たまたまデートの途中にお立ち寄りくださったこと、そして帰り道彼女にプロポーズしたことをお話しくださいました。
「子供がいるからって、いつもプロポーズしかけてははぐらかされていたけど、あの日OKしてくれたんや。
この子のパパにもなれるねん」
その時の彼の欣喜雀躍する姿が目に浮かびます。
男性は私に、「あの時、奥様って言ったやろ、帰る時大きな声で“ありがとう”って車まで見送ってくれて、なんでか今日はいけると思ったんや、ドーンと背中押された気がしたんやで」
と嬉しそうに話をしてくださいました。

 そして胸が熱くなる一言を。
「今日は僕達が3人で“ありがとう”をあなたに言いに来ました」と……。
心の耳で聞くお客様からの“ありがとう”。
心の耳に届け私の“ありがとう”。

 3歳のお子様は、今年で5年生。
お店が変わった私のところに車で50分、今も3人でご来店くださいます。

 私の“ありがとう”、今日もおかあちゃんの心の耳に聞こえていますか。
今、私の娘が子供に“ありがとう”を教えていますよ。

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